みなさんこんにちは。ONE PHOTOチーフフォトグラファーの原田です。( @yohar1114 )実は東京カメラ部でも2018年に10選にも選んでいただけるなど、風景や花火を撮るフォトグラファーとして活動しています。

風景を撮影するカメラマンにとって、レンズの次に嵌る沼が三脚沼です。自分自身も多くの三脚をテストしては売却してを繰り返し、現在の三脚群にたどり着きました。

そんな私が、今回は最近話題となっているPeak Design(ピークデザイン)のトラベル三脚(噂の三脚)を私物の競合品と性能比較したいと思います。

どこでもやっているような「いざ、開封の儀!」とか「細かい外観」のミクロ視点の情報はあえて排除して、実際に使用した時の性能で評価したいと思います。それでは早速行ってみましょう!!

原田義之
ONE PHOTOチーフフォトグラファー。主に企業や自治体のイメージで利用する風景関連の撮影やスターポートレートなどの特殊な撮影商品を担当。好きな撮影は星空、花火など。
Official : https://onephoto.jp/photographers/yoshiyuki_harada/
Twitter : @yohar1114

■検証

Peak Design Travel Tripod
昨年5月にクラウドファンディングで有名なKickstarterで27,168人から$12,143,435(約13億円!!)の出資を集めて製品化された話題の三脚です。巷では「トラベル三脚の最終形が出た!」などと発表と同時に話題になりました。ONE PHOTOではとりあえず、面白そうな商品ということで入手してみました。

GITZO GK100T
GITZOのトラベラー三脚は2017年に創業100周年記念の限定モデルです(実は全世界で1917本の限定品です。)。こちらは完全に私物で都会の夜景撮影にはほぼこの三脚を使っています。リュックの横に挿して持ち運べるので可搬性が高く気に入っています。限定品なので今は入手不能ですが、トラベラー1型とほぼ同等だと思っていただければ問題ありません。

Leofoto LS-225C
最近三脚界隈で話題となっている中国のLeofotoという新興メーカーの品物です。一部ではRRSの模倣品と言われていますが、実際多くの点で特徴が似ているので、かなりRRSを参考にして作られているな、と感じます。使ってみないと分からないということで購入しましたが、重さが1kgを切る点や、細くコンパクトにまとまる点などが気に入っています。

数値スペックは以下のようになります。

Peak Design, Gitzoはセンターポールを伸ばすとアイレベル(注:自身の目の高さ、おおよそ身長-15cmくらい)まで上げられます。Leofotoは全伸高126cmと少し低いため、展望台の柵の高さを超えられないケースが多いのが難点です。

私の考えですが、こうした通常サイズの三脚を使って風景写真を撮影する場合はアイレベルまで上げられることはかなり重要な要素になります。

全伸高(センターポールを伸ばさない状態)  左から ②Gtizo, ①PeakDesign, ③Leofoto
全伸高(センターポールを伸ばした状態) 左から ②Gtizo, ①PeakDesign, ③Leofoto

一番細い脚を比較すると以下のようなサイズ感です。Gitzoが15mm, PeakDesignが長辺14.5mm/短辺9.5mm, Leofotoが10mmと数値上は大して差がないように見えますが、並べるとかなり違います。

脚の太さ比較(短辺) 上から Gtizo, PeakDesign, Leofoto
脚の太さ比較(長辺) 上から Gtizo, PeakDesign, Leofoto

操作感

操作感は三脚に限らず全てのカメラ道具のデザインで重要だと考える要素です。操作感で私が重視するポイントは「安心感」と「ミスや事故を未然に防げる作り」の2点です。これは簡単に言うと「自分のフィーリングと道具の反応が完全に一致すること」です。

例えば、自分はロックされていると思っていたのに、実際は道具側ではロックがされておらずカメラを落としてしまうなどのミスがあっては絶対にならないと考えています。(余談ですが、レンズのマウントアダプターのロックが甘くて移動中にレンズが落下したことや、アルカスイスのクランプでしっかりロックしたと誤認して機材を落としたことがあります。涙。。。)

雲台の操作感

続いて、雲台の操作感について確認してみました。設計上コンパクトにする意図だと思われますが「雲台ロックのノブ」と「カメラを雲台にロックするノブ」が至近距離に、そして同一回転軸上にあります。これは好みの問題もありますが、私の感覚としてはPeakDesing三脚のダメなポイントだと考えています。

具体的に言うと、雲台ロックを緩めるつもりがカメラのロックを緩めてしまってカメラ落下。なんていう事故が、この同一回転軸上の設計では起きないとも言い切れません。注意して使いますが、ちょっと怖いのが正直なところですね。その点を意識しているのか、カメラを雲台にロックしているかのマークがあるのは事故を未然に防ぐ意識が見えるのは好印象です。

未ロック状態
ロック状態

ただし、水準器がある側にはロック状態のマークが無いのが気になります。本来であれば、水準器がある側が手前側(操作者側)に来るべきだと思うんですよね。こちらの水準器は視認性もあまり良くないので実用性が低いオマケといった感じでしょうか。実際に水準器を利用する場合は、別売りのものを使うべきです。

雲台の作り

続いて、雲台の作りについて。こちらはPeakDesignのページにも記載がある通りアルカスイス互換と呼ばれる方式でのプレートロックとなっています。ただし、実際に利用してみるとアルカスイスプレートをロックする爪の強度に不安を感じます。

PeakDesignの厚みは4mm, RRSの極小雲台であるBC-18は6.5mmとなっており比率的にかなり薄くなっています。そして、幅はPeakDesignが24mmに対してRRSは22mm。単純計算では断面積の比率で6~7割になり、力がかかる部分の面積が小さくなるので強度と耐久性が心配です。

PeakDesignのこの部分の材質が何かは外観からは判断できませんが、仮にアルミダイカスト製であったとすると強度と耐久性はさらに低下します。(これはあくまで材質についての明記が無いため、個人の感想程度に留めてください。もし、どなたか情報をお持ちであればご提供をお願いいたします。)

使い込んでいく間に金属疲労で爪が折れて機材が落下するという事故が起きないか不安になります。もちそん、メーカー側でも製品リリースに際しては、十分な強度計算をしているはずなので大丈夫だとは思っているのですが、多少の心配が残ります。

ちなみに、その点で言うとRRSはアルミニウム合金の6000系か7000系を削り出しで使っているので、単純な強度の点でもRRSに一日の長があるかと思います。

縦構図での使いやすさ

可搬性を重視した作りのため、縦構図での使用は残念ながらあまり良くないですね。設定できる角度の範囲が狭くなっています(とはいえ、一般的な用途で困ることは少ないと思います)。ですので、縦構図を多用する方はカメラ側にLプレートを使用すると良いでしょう。

Canon 5D4にCanonEOS 24-70F2.8をセットした状態での縦構図可動域。

アルカスイス互換プレートとの相性

三脚の雲台部分を評価するポイントとして、アルカスイス互換のプレートとの相性も重要な観点です。アルカスイス互換の雲台は、グリップ力が高く、他社の製品と共用できますので、既存の手持ちのアイテムも利用可能なので、無駄な投資を抑制してくれます。今回はPeak Designの雲台に私が持っているアルカスイス互換のRRS, Kirk, SunwayfotoのプレートをそれぞれPeak Deign三脚にセットしてみました。

結論を先に書くとRRS, Kirk, SunwayfotoのそれぞれのプレートとのPeak Design雲台の相性があまり良くなく、隙間が空いてしまいます。

アルカスイス互換では3つの面(側面・底面・側面)できっちりと挟み込むことでロックするのですが、Peak Designでは専用機材でない場合は接地面の相性が悪く2つの点でロックしているという状況です。(写真にも整理していますが、背後から光を当てることで隙間をハイライトしています。後ろからの光が見えるということは、隙間が空いているということなので、各メーカーのバラツキを明示することができます)

また、雲台のロック状態のマークも中途半端な位置で止まるので、バランス的にもやや心配です。

RRS(背後から光を出していますが、光が通る → 隙間が空いているということです)
RRS(もうちょっとしっかりロック位置まで絞りたい)
Kirk (RRSよりはマシですが、それでも光が漏れていますね)
Kirk (Kirkお前もか!!)
Sunwayfoto (一番わかり易いと思いますが、面ではなく線で固定している形です)
Sunwayfoto (純正以外はきちんとロックできないのは幅の問題が原因です)

鞄への収納感

結論から言うと、このサイズに収まることは他の三脚と比較してもコンパクトに纏まっています。良くここまで小さく作っているな。と感心するレベルです。

機内持ち込みサイズのスーツケース(RIMOWA Classic Cabin 36L)に入るかを比較確認しましたが、当然他の三脚同様に入ります。スーツケースにも余裕で収まるので旅行時も安心して持ち出せます。(三脚は基本的に機内持ち込みが出来ないので、スーツケースの中に入れるか、別でビニール袋等に入れて預け入れる必要があります。ただし、カーボンの三脚は衝撃や横からの荷重に弱いのでスーツケースの中に入れて運ぶのがおすすめです)

Peak Designの三脚はそのままでも十分にスーツケースの中に入りますね。
どの三脚もスーツケースに入りますがひときわコンパクトにまとまっているのが分かるかと思います。

性能評価 – 性能評価の方法について

実は三脚の性能を平等に測る指標は世の中に存在しません。例えば耐荷重を例にすると、A社は安心して使える機材の重さ、B社はとにかく載せることのできる重さというようにバラバラで、共通の評価軸というのは無いのが現状です。そして、そのメーカー各社の測定基準は意外とブラックボックスです。今回は私のこれまでの経験をもとに評価基準を決めて測定しました。

三脚の用途は大きく分けて2つあります。

1、構図を固定する目的で利用する(シャッタースピードは手持ちも余裕な速度でストロボを用いた商品撮影などに利用)

2、長時間露光でのブレ防止を目的に利用する(風景写真などの撮影で利用する方法)

これら用途で重要な事は、「1、構図の固定」の場合は「機材をしっかり支えられること」であり、「2、長時間露光」の場合は「機材をしっかり支えられること」に加え「ブレが発生しないこと」の2点で計測する必要があります。

三脚を利用してもブレが生じる?ということを不思議に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、突き詰めていくと案外そういったシビアな撮影シチュエーションは発生します。特に、私のように長秒露光を普段から撮影している人には常に付きまとう問題です。(だから、三脚を何本も試しては最高の1本を常に探し続けているのです)

三脚を利用してもブレるケースと言うのは下記の3パターンに分類出来ます。

1)地面が揺れる

地面は揺れないと思われがちですが、都心でも大型車が通ったら揺れますし、室内では人が横を歩いたら揺れます。特に室内などの場合は、そういった床の振動で僅かにですが揺れるケースは往々にして発生します。

2)風の影響を受けて揺れる

向かい風でレンズフードをしていると、帆船の帆のように風を受けてしまい揺れることがあります。他にもストラップやレリーズケーブルが風に吹かれるとバタバタ動いて三脚を振動させたりカメラを揺れさせることも。
そして、三脚の剛性が低いとこの影響が増幅されて顕著に現れる傾向があります。

3)振動が収まらないままになる

風の影響などで発生した振動の収まりが悪いと一度揺れたら長時間揺れ続けることになります。ですので、振動がいかに早く収まるか?が三脚を評価する鍵となります。特に一般的に良いとされるブランドの高い(太い)三脚ほど、振動が早く収束する傾向があります。

これらのうち「1.地面が揺れている」は外的要因であり三脚そのものでは防ぎようがないので、三脚の性能を確認するには「剛性」と「振動の収束」がポイントとなります。

評価項目と方法

機材をしっかり支える機能の評価

雲台の固定力が重要なので、30cmのスライダーをつけて、デジタルメーターを使って荷重をかけ、支えきれなくなった時の荷重を測定します。なお、ロックノブの締め具合は公平を期すために「①通常の使用感で締めた場合」と「②目一杯締めた場合」でそれぞれ測定します。

スーツケースなどの重量を測定するメーターを利用して、瞬間最大値を計測します。

剛性の評価

カメラの下に30cmのスライダーをセットして、スライダー先端に荷重をかけた時の構図移動量を測定します。

機材はα7RIV, FE24-70mm/2.8GM, 70mm, 手ブレ補正オフで撮影。

ピッチ方向の剛性

レンズ先端に500gの荷重を下方向にかけた時の構図移動量をピクセルで画像比較することで計測します。

ヨー方向の剛性

レンズ先端に500gの荷重を横方向にかけた時の構図移動量を撮影した写真のピクセルベースで測定します。

ヨーイング (yawing) とは、乗り物など前後・左右・上下が決まった物体が、上下を軸として(つまり、水平面内で)回転すること。ヨー (yaw) とも。なお、左右を軸にした回転がピッチング (pitching) またはピッチ (pitch)、前後を軸にした回転がローリング (rolling) またはロール (roll) である。

Wikipedia:「ヨーイング」より

振動の収束の評価

長時間露光時(今回は2秒で実施)にカメラを軽く触り、撮影画像のブレ具合を確認します。手で触っての測定するため、誤差が発生しやすいので5回撮影した中での中央値に当たるカットで比較することにします。

性能評価 – 結果

機材をしっかり支える機能の評価

Leophotoのまさかのグリップ力に驚き!!

剛性

撮影画像から赤枠の箇所を切り出して、移動量のピクセル数を測定しました。今回はONE PHOTOの新オフィスがある渋谷スクランブルスクエアのWeWorkで実験したので、モデルは例のテキーラこと”Don Julio 1942”をセレクトしました。笑

ONE PHOTOのお客様用のお酒ですので、いつでも遊びにいらしてくださいね!

各実写画像は荷重をかける前後のカットをレイヤー合成してPhotoshopで不透明度を設定して表示しています。

ピッチ方向 – センターポールを伸ばさない状態
ピッチ方向 – センターポールを伸ばした状態
ヨー方向 – センターポールを伸ばさない状態
ヨー方向 – センターポールを伸ばした状態

振動の収束

振動 – センターポールを伸ばさない状態
振動の収束がGitzoが良い三脚であることがよく分かりますね!!
振動 – センターポールを伸ばした状態

■検証結果まとめ

今回チェックした最終結果!!残念ながら、PeakDesignのカーボン三脚は最終形にはなれなかったようです。

Peak Designのトラベル三脚についての結論

良い点

・携行性が圧倒的に優れています!
・収納時は最もコンパクトです!
・このコンパクトさで全伸高はアイレベルまで対応できるので汎用性が高く利用できそうです。

悪い点

・剛性、振動の収束、雲台のロック力は今回比較した機材の中ではもっとも弱いということが分かりました。
・性能の割には重いと言わざるを得ません。 (PeakDesignは1.27kgに対してLeofotoは0.93kg。Leofotoの方が軽く、強いという良い結果が出てしまいました)

こういう人におすすめ

・三脚の主用途が構図を固定するだけの人、にはコンパクトかつ、可動域も広いのでオススメです。
・例えば、背景の構図を一定にした上で、ロケーションポートレートを撮影する人などには向くのではないでしょうか?

逆にこういう人にはおすすめ出来ません

・長時間露光をメインとする使い方には向きません。私のように風景や夜景がメインの場合にはちょっとメインの三脚にするのは現実的ではない気がします。どうしても長時間露光などで使用したい場合は、一番細い脚とセンターポールは伸ばさない、という使い方を徹底する必要があると思います。
・また、重い機材を載せるのはおすすめできません。最大でも24-70/2.8くらいに収めたいのが実情です。70-200mmクラス以上を使う場合はレンズフットを利用して、レンズと三脚を固定する利用法が適性です。

編集後記

以上、話題のPeak Design新トラベラー三脚の性能を、可能な限り数字で説得力を持って、競合商品と比較レビューして頂きました。この辺りをきちっとやるのは、いかにも再現性高く写真を撮りたい!と願う原田さんらしい切り口で正直なやり方ですね。フルカーボンの三脚で、この金額で購入できる軽量の三脚はなかなかないので、皆さんの期待値が高かった分、雲台のロック力や剛性については今ひとつなイメージと言ったところでしょうか? まだまだ、三脚沼を抜け出るための長い旅は続きそうです(笑)。今度はこの三脚を利用して、実際の現場での利用感などもレビューしてみたいと思います。最後までお読み頂きありがとうございました!!

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